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【詩】何回だって死んでやるわよ

 雨ったらない。はるか上空から落下する鉱物なのだからね。頭に穴があいちまうよ。
 こんな真夜中に傘をさしてどこに行こうっていうんだ、もしそういう人がいるのであれば言ってやりたい。僕は部屋だ、明日のために眠っている。日がかわったらもう今日だなんて、なんてこった。俺はそんな気分じゃないのに、時間だけは待ってくれない。

 コングラッチュレッシィン。

  むかし、俺は事故って三途の川の畔で目を覚ましたことがある。そこにはよく太った器量の良い女でサラギンヌというやつがいて、やたらとカンカン踊りを踊りたがっていた。俺は手拍子をつけて囃してやったのだが、ときどきダンテもどきみたいな若い男がやってきては官能を非難するので、なかなか踊りがつづかない。俺はサラギンヌを哀れんだ。彼女は退屈の慰めに歌を唄って、渡し舟に揺られる男たちを励ましていた。俺は渡れなかった、どうしても踊りが観たかったのだ。
 そのうち夜になった。あの世に夜があるなんて、と思っているとサラギンヌがパンを差し出して「まだ半死なんだからね」と言った。「腹もへるでしょ」
 俺はすっかり忘れていた胃袋という臓器の存在について逆説的に考えると、彼女からパンをうばってくらいついた。うまい……! 
 サラギンヌは笑った。俺は彼女の笑顔を見るとつられて笑ってしまった。だって、彼女の顔はまるで泥のようにぶよぶよ動くのだから。

「どうして笑うんだい?」
「だってあんた、よかったわね。素直にそれを食べていなけりゃ、あんたは完璧に死んでしまってたのだからね。あんた、よかったわね」

 俺は生き返った。
 カンカン踊りはおあずけだった。

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【2014/04/29 03:18 】 | | 有り難いご意見(0)
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