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									 ウオーン、ウオーン。と書くと、犬や猫のような動物が鳴いているようにも、人が泣いているようにも思える。一切が見えない暗闇のなかで、たとえばなにかが上記のような泣き声を上げていて、それが人か動物かわからない。が、なにか悲しみだけはたしかにあるという気がする。そのときそれを聴いている自分というのもまた、暗闇のなかでまったく知覚のみしかない自分であるような気になって、そもそも真実とはただこれのことのみなのではないか、と漠然と不思議な言葉で思ってみる。 すこしまえに「ループ」(原題:SALVAGE)という映画があって、その映画は、ある少女を殺した犯人が死後の世界(?)でその少女になって何度も自分が殺されるという(つまり、自分が殺した少女自身になって自分のしでかした犯罪を体験するという)反復されつづける地獄を描いたものであった。これは結局、だれが罰を受けているのかよくわからない。観客は犯人が少女自身になってるのだと気づくのだけど、少女(になっている犯人)は自分が本当はその少女ではないのだということに気づかないので、そこにはただ耐え難い殺人の反復に曝される感情だけがある。 いまこうして書いたり考えたりしている自分というのも、本当はいつかのだれかの記憶をなぞっているだけなのでないとも言いきれない。 嗚呼、こんなこと考えている人め。 PR  | 
							
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									  K市へのそう長くない道のりを、男はずっといらいらしていた。一車線しかない幅の狭い道路を車で走らせていたのだが、すぐ前に大型のトラックがのろのろと、しかも蛇行して、男の運転を妨害するのである。  | 
							
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